今日はお休みの日なのですが お仕事をさせて頂きました
籠盛りの片づけと搬入がメインでしたが もう一つ 大切なお仕事をしていました
それが ゴボウを刻むこと!
これは私たちが八百屋を手伝い始めたころからしていること もう19年になります
他の八百屋さんも されていることなのかもしれません
もしかすると特別な事ではないかも・・・・
このキザミゴボウは一月に2度ほど ご注文を受けています
本来はゴボウを刻む必要がないのですが・・・・・!
どうしてって?
それは ”キザミゴボウ”を仕入れることができるからです
そうです 初めから刻んだゴボウを仕入れれば 刻む必要がないのです
手間もかからず それなりに利益も頂ける しかし 自分たちで刻んだキザミゴボウは手間がかかり 利も少ない 人件費なんて計算していたら赤字です
じゃ!なぜ?
大きく2つの理由があります
一つは 工場で 機械によって刻まれ 出荷されるキザミゴボウの安全性と ゴボウそのものの質です
間違いなく 強い消毒(漂白)をされること そして どんなゴボウを刻んでいるか分からないことです
今の時代 体の害になる消毒や古いゴボウなんかは無いとは思います
今日私の刻んだ牛蒡は!
北海道産のゴボウです
ゴボウの産地といえば 青森 茨城 北海道で半分以上を生産しています
こちらのゴボウを刻みます
まず お写真で分かりますでしょうか? ひげ根の少ないものが良いとされています
そして張り くにゃ~って曲がってしまうものはダメ!
そして土の色 分かりにくいかもしれませんが 実際には赤みをおびています
赤土系で育てられたゴボウの特徴は赤土は地下の実に より多く栄養を行き渡らせる働きが強く きめが細かいゴボウとなります
今日のゴボウはとっても良いゴボウ これから長時間 この牛蒡と向き合います
今日は15㎏を刻みます
最初の工程は 皮を剥きます
ここで注意! ゴボウは皮が一番栄養があります と言うことは皮に近いほど栄養が高い事になります
一般家庭の場合は 土付状態から調理まで一人でできますので 皮をたわしで洗っていただいて調理していただければ 最大限の栄養が頂けます
豆知識
ゴボウを洗う時 ある程度土を落としてから ラップをクシャクシャに丸めて流水で洗い流すときれいになります
ここまで来るのに 1時間半
うすーく!うすーく!剥きます
キザミ開始 包丁を研いでよく切れるようにします
分かりにくいですが 樽には水を引いてあります
ゴボウはアクが強く 切った途端に茶色く変色してきます これはポリフェノールと酵素が結合してタンニン鉄に変化してしまうからなのですが こうなってしまうとエグミなどが出て料理がまずくなります
それを防ぐために 水でさらします 酢水ですれば さらによし!
ご家庭ではキザミ後 直ぐに調理すればゴボウの栄養をすべて取り入れられます
業務用になりますと やはり 綺麗でなければいけませんので 最低限度 水でさらします
参考までに 必要の無い情報
1本のゴボウを刻むのに 約1000回包丁で刻みます
そして 50本 計算すると 1000×50 50000回手首を振ったことになります
・・・・・どうでもイイですね OTL
は~い!3時間後 刻み終わりました
大きさがわかりますでしょうか?
小さな子供たちが食べるので 小さめに刻んであります
調理メニューによっては この半分ぐらいの時もあります
心なしか 私の指が黒ずんでいるのがわかりますでしょうか?
この黒ずみに もう一つの理由があります
50本のゴボウがこうなりました
ちゃんと 水は入っていますから!
上のほうはどうしても盛り上がってしまうので 直ぐにヒタヒタニ浸かるように水を足し 流水で自然に白くします
そして いつも刻んでいるときにしていること それは願い!
刻みながら ”
キザミゴボウを食べてくれる子供たちが健康でありますように”って
これだけは忘れずにしていること
それをやったからと言って どうなるものでもないですが 昔からの習慣になってしまっているので!
そして もう一つの理由
それは 父への尊敬と感謝 そして お金を稼ぐ大切さを忘れないためです
今 私の父は 半隠居状態ですが たまに市場へ行っては 沢山仕入れてきます
死ぬまで現役なんでしょうが そんな父親と私は仲が良くありません
え!何!それ!じゃ~なんで尊敬と感謝なの~?
では 父とゴボウのお話を少しします
ベル商店は大正創業 私の祖父が始めた商売
父は高校へ行きながらも 八百屋をやり始めていた 1年の半分も学校へは通えなかったと思います
時代は まだまだ みんなが貧しい時代
そして日本は高度成長期をむかえた! 私が生まれたのは その後半
物心つくころには 八百屋さんも忙しかったように記憶しています
家族と言うものや 家庭生活をあまり知らない父ではあったが 子供心に父親は大きな存在であった
その時の父親の大きな思い出 それが真っ黒になった手だった
指の指紋 指関節の溝 手の皺の中が常に黒く汚れていた
父に聞いた!『どうして こんなに手が黒いの?』
父は答えた!「これは ゴボウだ!」「ゴボウを刻むと手が黒くなるんだ」
そしてゴボウを刻んでいる時に「八百屋はな こうやって儲けるんだ!」そう教えてくれた
時々 母も同じ様にゴボウを刻んでいた
私は子供心に 父と母のゴボウを刻む姿を焼き付けていた
今は 豊かな時代 なんでも機械がやってくれる 当時はそんな機械もなく 包丁で刻むしかなかったんだろう
だから選択肢がなかった
そして 儲けると言った言葉 多分 大した利益ではなかったと思う
それでも 少しでも利益を出すために 週2・3度は刻んでいたゴボウ
そして 真っ黒に汚れた手 洗っても落ちない黒ずみ
少なくても 私はこの黒ずんだ汚い手のおかげで大人になれた
だから その時の父の姿を忘れないために ゴボウを刻み続けている
あ~っなんか 気取ったこと書いちゃった~~
刻んだ後 立とうとすると 真っ直ぐ立てない 腰と背中と手首に激痛が走る
そして これから冬の季節 凍りつく様な水の冷たさ 手の感覚がないまま ひたすら包丁を滑らす
もう 年なんだな~
でも 注文を頂ける限り 子供たちの笑顔と父への感謝をもって 刻ませて頂きます